去る11月14日に新潟市中央区にございますビッグスワンにて開催致しました「新潟県産材活用セミナー」ですが、多くの方々にご来場頂き、ありがとうございました。
今回はこちらのセミナーのレポートとなります。
まずご登壇頂いたのは、株式会社ATA社の代表取締役である、青谷敏男さん。
阿賀野市にございます「道の駅あがの」の建物本体も、紛れもないATA工法で建築された施設。明るく開放的で、構造材の木目もとても目に馴染む。そして他でもない坂詰製材所は、株式会社ATA様との「ビルディングパートナー」として、道の駅あがのをはじめ、多くの建築プロジェクトに名を連ねております。
※ATAハイブリッド構法とは、簡単に申し上げますと、「木材」と「金属」の長所/短所を補い合うことで、木造でも中・大規模の倉庫や店舗など柱のない大空間も実現可能な建築構法。大阪万博のパビリオンにも採用されております。
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元々、そういった中大規模施設はRC造(鉄筋コンクリート)やS造(鉄骨造)とういのが常識だったのですが、ここのところの建築部材や人件費の高騰によるコスト面と、世界的な潮流としての「LCC」(ライフサイクルコスト:使用時だけでなく、製造や輸送などトータルで発生する二酸化炭素排出量)などの面から、実は敬遠される傾向にある、ことはあまり知られていません。
「世界的に見ても、建築は『木質化』から、『木造化』へ間違いなく進んでいる。そのトレンドに対して、日本は法整備も含めて、まだまだ後進国。」なのだそう。
来る未来の街並みは、木目がまぶしい木造のビルや施設で溢れるのでしょうか?そんな未来の風景を垣間見た気がしました。そしてその多くの材料が新潟の山林で育った「メイドイン新潟」だったとしたら…。青谷さんの講演は、そんな未来を物語っていました。
つづいて登壇されたのは、石田伸一建築事務所の石田さん。
他でもない、石田さんの「新潟県産材」への思いも、並々ではない。
食べ物において、「その土地で育てて、その土地で消費する」ことを「地産地消」といいますが、木材においては、「地材地建」と呼んでいます。それをわざわざ提唱しなければいけないくらい、昨今では「当たり前」ではありません。戸建住宅においては、その構造材(骨組みになる木材)の半分以上は、国産に比べて安価な「輸入材」が利用されているのが現実です。
石田さんは、ある日セミナーのために訪れた鹿児島県で、「地材地建」がごく当たり前な現実に驚かされました。『地元の木材で建てる、そういうもんでしょ?』。その現実に触れ、石田さんも「新潟でもそんな動きが当たり前になるべきだ!」と、具体的に動き出しました。建築だけにとどまらず、大工さんの育成や林業にも取り組み、いまは「街づくり事業」にも着手。石田さん曰く、「自分ごとになった(した)」。
そんな思いが形になったのが、我らが坂詰製材所と、石田伸一建築事務所の石田さんとのコラボ住宅「素木」(しらき)。※完成を記念して、この素木のコンセプトや建築に至ったストーリーなどをインタビュー形式で語られております。こちらも必見!
にいがた県産材の家「素木-SIRAKI-」~坂詰製材所×石田伸一建築事務所インタビュー~【PR】 | マガジン | 新潟日報sumica
そう。新潟の山林は危機的状況です。
青々と木々が茂っているように見えますが、山林所有者の高齢化や後継者問題などで、満足に手入れされている山林は、実はごくごく一部。本来は「切って、植えて、育てる」がセットの林業ですが、さまざまな理由で地元の木材のニーズが少ないので、「切って」が、満足になされていない。その結果、「植える」「育てる」という「山林の新陳代謝」が上手く行われていないという事態が、現在進行形で起こっています。
だからこそ、より計画的で抜本的な「新潟県産材に落とし込む方法」を徹底的にアクションとして具体化しないと、現状は変わらない。それをトップランナーとしてけん引しているのが石田さんです。この方の動きは、今後も見逃せません。 ※長岡市にございますモデルハウス「素木」は、その思いの結晶ともいえる、美しく重厚で、ストーリーに溢れる住宅です。
新潟県産材の利用促進。これらを、木材に関わる関係者だけでなく、そうでない一般の方含めいかに多くの方々に「自分ごとにしてもらうか?」が、最大のテーマなのではないか?と、その可能性と課題を強く認識させられた、セミナーでした。
サカヅメハウジング 安久